太陽、月、そして水星から冥王星、四大小惑星・・・
ホロスコープに現れる星はギリシャ神話(ローマ神話)の神々が起源。
かつては星は神そのものとみなされ、崇敬の対象でした。
星の神々をおおまかな系図に沿いながら12星座との関係でまとめてみました。
それぞれが守護を受け持つ星座の性格に影響をあたえているのはもちろん、
チャート上でもその影響力を様々な形で発揮しています。
現在英語の天体名はローマ式の名前になっていますが、
ここでは、神話を追う上ではよりなじみの深いギリシャ名に英語名を併記します。
ウラノス [ウラヌス]:天王星 水瓶座の守護星
最初の天の神。ガイアの息子にして夫。
クロノス [サターン]:土星 山羊座の守護星
ウラノスの息子で父の性器を切断、支配権を奪う。大地と農耕の神。
アフロディーテ [ヴィーナス]:金星 牡牛座と天秤座の守護星
愛と美の女神。ウラノスの切断された性器から生まれる。
ゼウス [ジュピター]:木星 射手座の守護星
クロノスの息子でオリンポスの神々の王。姉のヘラを正妻とする。
ハデス [プルートー]:冥王星 蠍座の守護星
ゼウスの兄で死の世界の王。
ポセイドン [ネプチューン]:海王星 魚座の守護星
ゼウスの兄で海の王。
アレス [マーズ]:火星 牡牛座の守護星
ゼウスとヘラの息子で戦いの神。
アポロン [アポロ]:太陽 獅子座の守護星
ゼウスとレトの息子で、太陽神であり、医術と音楽の神。
アルテミス [ダイアナ]:月 蟹座の守護星
ゼウスとレトの娘で、月の女神、狩猟の女神。
ヘルメス [マーキュリー]:水星 双子座と乙女座の守護星
ゼウスとマイアの息子で、商業と泥棒の神。
以下西洋占星術の四大小惑星
ヘステア [ベスタ]:ゼウスの姉で、かまどの女神。
デメテル [セレス]:ゼウスの姉で、大地と農耕の女神。
ヘラ [ジュノー]:ゼウスの姉にして正妻、婚姻の女神。
アテナ [パラス]:ゼウスの頭から生まれる。知恵と工芸と戦争の女神。
12星座の星の神々の系譜を原初からたどりましょう。
原初の混沌カオスの中に現われた大地の女神ガイア。
ガイアは天空神ウラノスを生みます。
[ウラノス=ウラヌス(天王星):水瓶座の守護星]
ウラノスはガイアと夫婦になり、多くの子供をもうけますが、
ウラノスはそれら醜い子供たちを嫌って、タルタロス川に投げ込みます。
不満に思ったガイアは子供たちに夫の殺害を提案し、
末子のクロノスが鎌で父ウラノスの男性器を切って倒します。
[クロノス=サターン(土星):山羊座の守護星]
この神話では天王星の表す反逆的性質は見られず
また土星の保守的な性質も見られません。
水瓶座の守護星(神)としてはプロメテウスの方が
ぴったりとくるという見方もされています。
天空神ウラノスは謀反を起こした
我が子クロノスによって性器を切断されてしまいます。
クロノスはそれを海へ投げ捨てますが
性器からこぼれた泡から
愛と美の女神アフロディーテが生まれます。
[アフロディーテ=ヴィーナス(金星):牡牛座と天秤座の守護星]
"愛と美"にふさわしいようなふさわしくないような話ですね・・・。
別伝では、クロノスの息子ゼウスと
ウラノスの娘ディオネーの間に生まれたという話もあります。
アフロディーテは西風(ゼフィロス)に吹かれて
キュプロス島にたどりつきます。
画像はフランスの画家アレクサンドル・カバネルの「ヴィーナスの誕生」(1863)
天空神である父ウラノスをたおして
タイタン族(巨人族)の王となった農耕神クロノスは
レアとの間に多くの子をもうけます。
[ウラノス=ウラヌス(天王星):水瓶座の守護星]
[クロノス=サターン(土星):山羊座の守護星]
しかし、父母・ウラノスとガイアの予言によれば
クロノスもまた自分の子に倒され王位を奪われるとのこと。
これを回避するためにクロノスは我が子らを呑みこんでいきます。
ウラノス=サターンの既得権益への執着というところは
山羊座の性質に現われているように思います。
画像はバロック期のフランドルの画家ルーベンスの
「我が子を喰らうサトゥルヌス」(1635-1638)
ちなみにルーベンスは『フランダースの犬』のネロが憧れた画家です・・・。
生まれた子供を次々飲み込んでしまうタイタン族の王クロノス。
妻のレアはゼウスが生まれると
クロノスに身代わりの石を飲み込ませゼウスを保護します。
[ゼウス=ジュピター(木星):射手座の守護星]
無事成長したゼウスは、父クロノスを襲い
飲み込んだ姉や兄たちを吐き出させます。
こうして救出されたのが姉のヘステアととヘラ、
そして兄のプルートーとポセイドン。
ゼウスは兄弟たちと力を合わせ
クロノスらのタイタン族と戦い勝利をおさめました。
ゼウスは兄たちと籤引きによってそれぞれの統治範囲を分担します。
結果ゼウスは天の国を、長兄のプルートーは死の国を、ポセイドンは海を
それぞれ統治することになったのでした。
[ヘステア=ベスタ] [=セレス] [ヘラ=ジュノー]
[ハデス=プルートー(冥王星):蠍座の守護星]
[ポセイドン=ネプチューン(海王星):魚座の守護星]
ゼウスが、姉や兄を呑み込んだ父クロノスに
姉や兄を吐き出させて救出する際
ゼウスを手助けしたのがメティスでした。
ゼウスの欲情に気づいたメティスは、
様々に姿を変えて逃げるのですが、ついには犯され妊娠します。
祖父母のウラノスとガイアの予言によれば
メティスは神々と人の王となる子を産むというので
ゼウスは妊娠中のメティスを食べてしまいます。
やがてゼウスは頭痛におそわれ、ゼウスの頭から
パラスが生まれでてきます。
女性神だったために安心したゼウスは
パラスに自分に次ぐ高い地位を与えました。
パラスは処女神で知恵の神、ギリシャ都市アテネの守護神になります。
[パラス=小惑星パラスアテナ]※ローマ神話ではミネルヴァ
<サンドロ・ボティチェリ「パラスとケンタウロス」1898
神々の王となったゼウスは姉のヘラを正妻とし
間に戦いの神・アレスをもうけます。
[アレス=マルス(火星):牡羊座の守護星]
ゼウスは先に単体でアテネを生んでいますが
(先妻メティスとの間の子とも解釈できる・・・)
ヘラはこれに対抗して単体で
鍛冶の神ヘパイストオスを生み出します。
結婚後もゼウスは多くの女神や人間と浮気を重ね、
嫉妬深く貞節なヘラの気をもませることになります。
牡羊座の戦闘性と冒険性はアレスからくるもの。
射手座の浮気癖はゼウスの影響といえそうです。
小惑星ジュノー(ヘラ)は夫婦関係と人間関係全般に
関わる星と解釈されています。
愛と美の女神アフロディーテは
ヘラの計らいでその醜い息子・ヘパイストオスを夫にしています。
しかし、やがてゼウスとヘラとの息子である
軍神マルスと出会い、恋人同士になります。
この美男美女のカップルから生まれたのがエロス(キューピット)。
ヘパイストオスもただ耐えているだけではありません。
床に網を仕掛けておいて裸のアフロディーテとマルスをとらえ
晒しものにしてしまうのです・・・。
[アフロディーテ=ヴィーナス(金星):牡牛座と天秤座の守護星]
[アレス=マルス(火星):牡羊座の守護星]
アフロディーテとマルスは夫婦だった、という話もありますが
占星術的には金星が男性にとっての、火星が女性にとっての恋人像を
あらわすため、恋人同士としたほうが適切です。
画像は盛期ルネサンスの画家ピエロ・ディ・コジモの作
「ヴィーナスとマルス、キューピッド」1490
レトは好色なゼウスの浮気相手となり身ごもります。
ゼウスの正妻のヘラは、嫉妬からレトに呪いをかけ、
子を産む土地をみつけられないようにします。
身重の身体でさまようレト。
しかしオルティギュアの島は浮島だったため
ここでレトは双子の兄妹を出産できたのでした。
ゼウスは鎖で島をつないで安定させレトを助けています。
生まれたのは太陽神アポロンと月の女神アルテミス。
その後、オルティギュアはデロス島と呼ばれるようになり
アポロン崇拝の地となりました。
[アポロン(太陽):獅子座の守護星]
[アルテミス=ダイアナ(月):蟹座の守護星]
※太陽はヘリオスともされ、アポロと混同されています。
プレイアデス七姉妹(アトラスの娘たち)は
月の女神アルテミスの侍女を務めていました。
浮気な神の王ゼウスはそのうち三人までをものにしています。
ゼウスと長女マイアの間に生まれたのが
商業と盗み・旅と情報の神ヘルメスです。
[ヘルメス=マーキュリー(水星):双子座と乙女座の守護星]
生まれたその日のうちに
ヘルメスは異母兄である太陽神アポロンの牛を盗みます。
まだ赤ん坊のヘルメスは盗みを見咎めた老人を買収し、
アポロンの追及を理屈でかわします。
ゼウスの仲介でアポロンは竪琴とひきかえに牛を取り返したのでした。
その後ヘルメスはアポロンに笛をあたえ
ひきかえに黄金の杖と占いの術を授けられています。
やがてヘルメスは父ゼウスの伝令として活躍するようになります。
若々しさと神経質なところ、計算高いところは
双子座とともに乙女座の性質となっていますが、
とくに双子座の機転が利いて理屈屋で時に嘘つきな性質には
ヘルメス誕生時のエピソードが反映が見られます。
ちなみに有名ファッションブランドのエルメスの名は
ヘルメスのフランス語読みです。
豊穣の女神デメテルは
弟である神の王ゼウスおよび
やはり弟の海の王ポセイドンのそれぞれに襲われ
それぞれの子を身ごもっています。
ゼウスとの間に生まれたのがペルセポネ。
[デメテル=セレス(小惑星):蟹座の副守護星]
[ポセイドン=ネプチューン(海王星):魚座の守護星]
やはり弟である冥界の王ハデスはといえば
この娘のペルセポネが気に入り、冥界に連れ去ります。
ハデスの略奪に怒り悲しんだデメテルは
豊穣の女神の役割を放棄し地上を放浪します。
作物は実らなくなり地上の生活は荒れ果ててしまいます。
[ハデス=プルートー(冥王星):蠍座の守護星]
ハデスはデメテルの訴えにしぶしぶ応え
ペルセポネを母デメテルにかえすことにします。
しかしペルセポネは冥界のザクロの実を食べていために
完全に地上に帰ることができません。
そこでゼウスが調整して、彼女が一年の三分の一の期間だけ
冥界でハデスの妻の役割を果たすようにしたのでした。
毎年この期間が訪れると母ペルセポネは悲しみのうちにすごします。
これが不毛の季節である冬なのです。
ハデスがペルセポネを離さないようにするため故意に
ザクロを食べるように仕向けたという説は
執着心の強い蠍座の守護星に相応しい話です。
バロック期イタリアの彫刻家ジャン・ロレンツォ・ベルニーニの
「ペスセポネの略奪」1622年、ボルゲーゼ美術館蔵